読書:A・クレピネヴィッチ、B・ワッツ 『帝国の参謀―アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦略』

キューブリックの名作『博士の異常な愛情』の舞台であるBRAND Corporationは、ランド研究所をモデルにしていると言われる

加藤陽子さんの『戦争まで』で言及されていた本作。戦略家として著名なマーシャルの人物伝の体裁をした、アメリカ国防面から見直す戦後史、といったところか。序文でも、国家安全保障と国防戦略に対する発想・構想の発展がテーマとして宣言されている(p4-5)。戦闘機や米国国防組織に詳しくないと、少し退屈かもしれない。

ネットアセスメントとは

ネットアセスメント(総合戦略評価)という言葉も、米国の専門家の中で定義が確立されていないのが実情のようだ。解説によれば、「ネット」を「網」「正味」ではなく、銀行間決済の相殺手続きのイメージで捉えると本来のニュアンスに近づく。

戦闘機の数“だけ”で国の軍事力を論じることはできない。さらに整備員の状態、補修部品の備蓄、製造メーカーといった領域まで視野を広げて考えることで、本来的な一国の戦略評価が可能になる。さらに、整備員の士気はどうかといった「不可視」な領域までも考慮することを、ネットアセスメントは主眼とする。マーシャルの最大の貢献はこの手法の確立にある。

冷戦期の米国内では、ソ連の軍事力を過大評価していたが、マーシャルは軍事費の超過で破産を迎えつつあると指摘し、その崩壊を早めるための手段を提言した。

百科事典に戯れた少年時代

マーシャルが生まれた1921年のデトロイトは、今でこそ経済破綻で衰退の象徴となっているが、当時は産業部門の要、とくに自動車生産の中心であった。小さい頃から好奇心の強かった彼のエピソードで最も印象的なのは、百科事典購入の顛末であろう。彼は父同様に本の虫で、蔵書の文学全集や百科事典などを読み進んでいった。それに飽き足らず近隣図書館にも入り浸り、本の購入に支出の大部分を割いていたのだという。そして、ついには各領域の俊英によって分担・執筆された、当時最高峰のブリタニカ百科事典を手元に置きたいがために貯金を始めたほどであった。

シカゴ大学にて

戦後、友人の勧めで入学したシカゴ大学には、ミルトン・フリードマンやフランク・ナイトなど、のちのシカゴ学派第一世代が教鞭をとっていた。ハーバート・サイモンとは、一緒にセミナーに参加する仲だった。こうした後生の偉人たちが在籍する環境で経済学を学んでいくうちに、抽象的なモデルで現実の行動を説明しようとする経済学の方向性に、違和感を募らせていった。合理的行動をビルトインした人形遊びよりは、コンラート・ローレンツのような動物行動学への関心を示した。

知的好奇心が旺盛な気質と、抽象的な説明(モデル、数式など)への不信感は、彼がのちにネットアセスメントを発案する物語の端緒となったと言えそうだ。

ネットアセスメントまでの道程

核戦略研究の源となったランド研究所に勤務したマーシャルは、研究所が採用するアプローチ、とくにモデルへの執着とその陳腐化を指摘した。人間が合理的な意思決定をするという前提で、ソ連も同様の意思決定をすると想定したが、実態を示す証拠はその反対を示す場合が多かった。

 「ビーンカウンティング」や量的測定基準に依存することの危うさを強調した『軍事力評価をめぐる問題』という報告書(知人に依頼されて書いたもの)では、大きな政府組織や官僚機構の意思決定過程を詳細に分析することが喫緊の課題だとしている。

「ネットアセスメントについての我々の考え方は、アメリカの兵器システム、戦力、政策を他の国のそれらと注意深く比較することだ」その必要性を訴える。 明確な方法論は提示していない。今後発展させる必要がある。システム分析の還元主義的思考法をすてる

RMA

ミサイルや情報技術の進歩によって、戦争のあり方を変える可能性を示唆
91年湾岸戦争の勝利を革命的変化の予兆と捉え、アメリカがこの革命を主導することを主張
→ クリントンやブッシュ政権はこの提言にしたがい、アメリカ軍の変革が推進された
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